胡蝶ノ夢・あとがき ここまでご覧下さりありがとうございます。胡蝶の夢、無事完結させる事が出来たのは、ここまで読んで下さった方達のおかげだと思っております。 さて、ここからは全体の後書きとして、色々書いておこうと思います。長い上に読まなくても何ら支障はないのですが、私自身もこの作品には色々と思い入れがありますので、一つの区切りとしてここに記しておきたかったのです。 そもそもこの話を書こうと思ったのは、本編に不満を持った事が始まりでした。 ここのサイトの方針からも分かるように、私も相方も、アスランとカガリの組み合わせを支持しておりません。それが何故かというと、二人がどうして惹かれ合うのかがいまいち理解出来なかった事にあります。 どうもアスランはラクスに振られたから、カガリはキラとキョウダイだったから、という理由でくっついたようにしか見えず、果たしてこの二人に恋愛を絡ませる理由はあるのだろうか。甚だ疑問でした。 それならばと着目したのがアスランとミリアリアの関係で、これはつきつめれば面白い展開になるのでは、という妄想から始まり、しかし現実的にアスミリのマイナーさに嘆き、ないなら自家発電だ、と。今思うと何て短絡的で見切り発車なんだろうかと思うのですが(笑) 書き始めた当初は、webで公開するつもりはありませんでした。というよりも、HPの作り方など知りもしませんでした。なので、本当の本当に自分達だけが楽しむものとして書いておりました。 それが何故こうしてweb公開する羽目になったのか、今ではその過程も思い出せません。が、一ついえる事は、web公開しなければ恐らく最後まで書ききろうとはしなかったという事です。実際書ききるまでにものすごい時間を要してますし、恐らく、途中で匙を投げた方もいらっしゃるかとは思います。 途中で展開に行き詰ったり。続編が始まってしまったり。書き方が変わって地味に何度も書き直したり。正直書く気を失くした事も何度もあります。だけども途中で投げ出す事だけはしたくなかったのです。例え、もう誰も読んでいる人がいなくなったとしても。 * * * * * * * * * * * お話の方ですが、全体的に少女漫画色が物凄く濃いよなぁと、書き手ながらに思います。読み返すのも恥ずかしい。これはひとえに私自身が少女漫画で育ってきたせいでもあるのですが、途中からはもうそれを念頭において書く事にしました。 臭い台詞もサラッと口にする男、それがうちのアスラン・ザラ。 アスラクロイヤルカポーの会話は本当に赤面ものなんですが、書いている時は結構ノリノリでした(笑) そしてお話を書いていく上でここだけは絶対に譲れなかった事。 それは「アスランがミリアリアに謝罪をしない事」でした。 後書きにも書いてありますように、あの件は『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』の主人公ヒイロの台詞の影響を受けています。あと何人殺せばいい、から、あと何人に謝ればいい、に。 アスランがミリアリアに謝るならば、今まで撃墜してきた地球軍の兵士はどうなるんだって話ですよね。彼等の遺族全員に謝罪する事なんて出来やしないのに、たまたまトールがキラの友達だったから、ミリアリアが目の前にいるから、だから謝っておく、だなんて陳腐にも程があるのではないでしょうか。文中にも書いてるんですが、アスランは絶対トールをいつ殺したのか自覚もないでしょうし。それなのに、とりあえずの「ごめん」の一言で全部を片付けられるトールも可哀想だと思います。 トールにだって、キラの役に立とうとか何かしようとか、色々な決意があったんだから。それらを全て受け止めた上で、ごめんは言わない。本編のアスランはキラやラクスに流されて謝ってしまいそうですが、アスランには、それぐらいの覚悟を持って欲しかったなぁと。だって彼、自分から志願して軍人になっているんですよ。 また、そうする事でミリアリアの中でのアスランの位置と他キャラの位置に差異をつける、というのもありました。 多分、キラもラクスもカガリも、アスランの立場に立ったら絶対に謝罪するだろう、と。ディアッカ…はちょっとどうなのかは分かりませんが。ただ全員にいえる事は、彼等は皆優しいんです。気を遣ってくれるんです。例えるならば、真綿で包んでくれるような感じ。 だけどもアスランは優しいし親切だけど、少し違う。時には前に立って、時には横に立って、手を引いてくれるような、そんな感じ。 ………なんかこう、上手く言えないんですけども。前者が「戦争だった、仕方ないんだよ」と慰めてくれるタイプならば、後者は「戦争だった。だけどもそれを選んだのは自分だろう」と諭してくれるタイプ。(よくよく考えるとキラやラクスの「仕方なかった」という考えは結構えげつないですよね。) 兎に角そうする事で、ミリアリアの中のアスランが「キラの友達」「トールを殺した人」「元ザフトレッド」から「アスラン・ザラ」という人への興味に変わればいいんじゃないかなと思いました。ちなみにミリアリアもアスランと同じタイプで、やっぱりそれがアスランのミリアリアへ対する好意に変わって……いってるつもりです。少なくとも、私は。 それでもやっぱり二人の接触は少ないので、強引な展開だったりご都合主義だったりも沢山あるんですけどね。 あとはラストの展開ですね。これは非常に迷いました。 何に迷ったかといえば、再会させるタイミングですね。案としてはアニメ最終回直後辺り、もしくはミリアリアがオーブに帰る直前、というのもあったのですが、結局戦後しばらくという形をとらせて頂きました。ただし、アスランがプラントに、ミリアリアがオーブに、という所は変わってません。どちらにしろ二人は一時離れ離れになる予定でした。ちなみに戦後の各々はまず間違いなく私の願望です。が、それなりにらしい未来を用意したつもりではいます。 ラクスとカガリはきちんと政治の勉強を。キラやサイやミリアリアは学生に逆戻り。AA組は逃げずにきちんと軍と向き合って、ザフト組も当然プラントに帰郷。彼等には己のやらかした事や戦争で学んだ事を、きちんと清算して今後に活かして欲しいなと思います。軍人組にはやっぱりここでもご都合主義っぷりが発揮されていますけれど(笑) エピローグは、大分時間がすっ飛んで場所がプラントに移っています。デートでもいいし、結婚の報告でもいいし(笑)、兎に角二人で墓参りで本当にラスト、というのはハッピーエンドにすると決めた時点で決まっていました。大事な場所に大事な人を連れて行く、というのは少女漫画展開の王道ですよね(笑)! 二人の告白シーンも告白の言葉も書いてません。けれど、最後は二人でいるのが当たり前になっている。その間に二人にどんな遣り取りがあったのか、今の二人はどんなふうに過ごしているのか、そこはお好きに捉えて頂ければ良いかと思います。余韻という程大層なものではありませんが、穏やかな日常を過ごす当たり前なカップルの一コマから、何か一つでも感じて頂けるものがあれば良いなと思っています。 * * * * * * * * * * * 本当に、ここまでお付き合い頂いてありがとうございました。重ねてお礼を申し上げます。 アスランとミリアリアという組み合わせ、初めは受け入れてもらえるのだろうかと戦々恐々としていたのですが、温かいお言葉を多数頂き、とても励みになりました。 駄文ではありますが、少しでも楽しんで頂けたならば、幸いです。 2009.10.16 written by Siki. Thank you for reading this novels! |