何故、それがアスランだと判ったのか自分でも分からない。
いくらコーディネイターの能力でもバイザー越しの表情、まして三年も会っていなかった親友の顔なんて。


あの時、目の前の女兵士が撃たれて、危ないと思ったら身体が動いていた。
女兵士を背後に庇って、その後は考えてなかった。

ナイフを振り上げたザフト兵が迫ってくるのを、緊張の糸を張り巡らせながら何かとてもゆっくりとした時間の中で見ていた。
ザフト兵が咆哮をあげて向かってくる。
バイザーが角度を変えて、反射する炎をはじいて顔が見えた。



印象的な碧の瞳と深い蒼の髪。


最後に別れた時の映像が自然に流れ込んできて、君だと分かった。

その瞳は思い出の中のように優しくはなかったけれど。




「・・・アスラン?」



「・・・・・・キラ!?」





まるで時が止まったかのように、呆然としていた。
炎が躍り狂っている状況も忘れて、爆発音も聞こえなかった。
吸い寄せられるようにアスランしか見えなくなっていた。


怪我をした女兵士がアスランに向けて発砲するまでは。

はっと我に返ったときにはもうアスランは、弾を避けながら行ってしまって姿が見えなくなっていた。
すぐに会うことになったんだけど。

そして僕はモビルスーツに乗り込んだ。




あの、別れた瞬間から僕たちの戦いは始まっていたんだね。






あれから、何回も戦って人の命を奪って大切なものを壊し合った。


あの時がなければ、抱えている悲しみも苦しみも、痛みも後悔も無いけれど。
たくさんお互いを傷つけて、憎み合ったけれど。










今だからそう思えるんだけど、君はこんなこと言ったら怒るのかな。


偶然かもしれなかったあの瞬間に、

出会ったのが他の誰でもない、君でよかったなんて言ったらさ。