理由なんていりません ただ好きなんです 何で予約済みの相手なんか…自分でもそう思わずにはいられない。初めから伝説のエースに興味があったのは認める。でもまさか『好き』に発展するとは思わなかった。 斜め前のテーブルにこちら側を背にして座っているその相手をちらと見て、ルナマリアは小さく溜め息をついた。 アスランは今、コーヒーを啜りながら何かの書類を眺めている。そして彼女は先程から、お仕事はまだ終わらないのかしらと声をかけるタイミングを図っているのだ。 婚約者がいるのに…と考える一方で、真逆の行動をしていることをルナマリアは自覚している。 アスランのことを知れば知るほど、一緒にいればいるほど、どうしようもなく惹かれてしまう。 物思いに耽っていると、スッとアスランが立ち上がる気配。 「ザラ隊長!お仕事終わったんですか?それなら射撃の訓練に付き合ってもらえません?」 …ああっ!?メイリン!そうだ、敵は一人じゃないんだったとルナマリアは頭を抱えた。しかも私が考えてた誘い方じゃないの!と更に頭を抱え込んだ。 そう、彼にはこういう誘い方が一番効果的なのだ。本人が言っていた通り、人付き合いが苦手らしい。余り強引に押しすぎると警戒されてしまうことは立証済み。でも、こちら側に好意があるなんてことは少しも考えてないようで、普通に接すれば普通に返してくれる。要はさじ加減。訓練なら一緒にいられるし練習になるしでまさに一石二鳥。本人曰くシャイな彼には一番効果的で誘いやすいのだ。 でもメイリンに先を越されてしまった。やるな妹よ…と羨ましく思っても、余所見してた自分が悪いと涙を呑んで次の方策を巡らしていると、 「ルナマリア、君も射撃訓練一緒にするかい?」 苦手だっただろう?と、隊長自ら声をかけてきた。 ルナマリアがぽかんとしていると、練習しない?とアスランは再度の呼びかけ。 「…行きます!」 と元気よく立ち上がる。願ったり叶ったり。行くに決まっている。隊長の後ろにいるメイリンの表情は見ないフリ。 嬉しくてたまらない。例え姉妹二人、射撃の腕前がよろしくないことを心配していたとしても。 無意識で喜ばせたりするんだから罪なヒトだと、女心が分かってないなぁと苦笑しつつ、今の感じが心地よかったりするから困り者だ。 とりあえず、私は貴方に夢中みたいです。 |