見つけた。
ソファに腰を落ち着かせてる彼女。
ピンクの髪のお姫様を。

「ラクス、」

こちらに気付いた。でもすぐに眼を伏せてしまった。

「ラクス」

あれっと思って、もう一度呼んでみる。顔は上げられない。

「ラクス」

近づいて髪に触れる。けれども彼女は頑なに俯いたまま。

この愛すべきお姫様はどうやらご機嫌斜めなようだ。怒ってるわけでも悲しんでいるわけでもなくて、ご機嫌斜め。

さて、どうしようか。


「きゃっ」

彼女を抱き寄せて、入れ替わるようにソファに腰を下ろす。
少し強引だったかな?と膝の上に乗る格好になったラクスを見やれば、ふいっと顔を合わせないように向こうを向いてしまった。

「ラークース、こっち向いて下さい」

宥めるように声を掛けてみる。
不意に甘い匂いが鼻腔をくすぐった。ラクスの匂いだ。

「ラクス」

ぎゅっと抱きしめる。

「ラクス」

髪を梳く。

「ラクス」


ふっとラクスの身体から力が抜けて、彼女が肩口に凭れ掛かってくるのが分かった。
相変わらず顔は見せてくれないけど、一先ず安心だ。

さっきよりも強くなった甘い香り。衝動のままにラクスの柔らかい身体を抱きしめる。

「ラークス」

すると彼女の身体がもぞもぞ動いて、やっと顔を合わせてくれた。
覗き込んでみると、きゅっと結んだ唇とぷくっと膨らんだ頬と何か物言いたげな視線を向けられた。訳が分からなくて、どうしました?と視線で返してみる。
微動だにしない彼女に気圧されながらも何となく眼を放せなくてしばらく見つめあっていると、張り詰めてたラクスの瞳が和らいで、また凭れ掛かってきた。
ラクスの腕が回されて、しがみ付いてくる。
訳が分からないままに条件反射で抱きしめた。

「ラクス…?」

困惑して名前を呼んでみても返事はない。
振り回されてるなと嘆息しながら、この愛しい恋人が気の済むまでこうしていようと決めた。
大好き、愛しい、愛してる。
普段は絶対口に出せないこの気持ちが少しでも多く伝わったらいいなと思って、ラクスを隙間も無いくらい抱きしめて、何度も何度も名前を呼んだ。



たくさんの好きと、たくさんの愛を、きみに