困った。これは困ったぞ。
額に汗を浮かべて唸ってる男が一人。
気のせいか?いや、そんなはずはない。明らかにいつもと違う。何かしたか?いや、身に覚えがない。何故、何故?


「なに情けない顔してんの?」
「わっ!?…キラ、脅かすなよ」
「そっちが自分の世界に入ってたんでしょ。珍しいね。どしたの?」
ふう、と心臓を落ち着かせて覗き込んでくる幼なじみを眺める。言おうかどうか一瞬迷って、一人で悩んでても答えは見つからないと打ち明けた。

「最近ラクスが何を考えてるか分からないんだ」
「…は?」
「だから…」
「違う違う、繰り返さなくても分かってるよ。でもさ、そんなのいつものことじゃない?」
相変わらずこの幼なじみは真顔で力が抜けることを言う。きょとんとしているキラに、あぁ本気で言っているな…と思わず顔を覆う。否定しきれないところがラクスに申し訳ない。
「…俺の言い方が悪かった。ラクスが最近変なんだ」
「…さっきと変わってないよ?」
「…よそよそしいというか無理してるというか、上手く言えないんだ」
「あぁ!」
「心当たりあるのか!?」
合点がいったようにキラは声を張り上げ、じとっと瞳を向けた。
「…アスラン本気で分かんないの?」
「だから、そう言ってるだろ」
何だよ、と眉をしかめてキラを見る。はぁ〜と深い溜め息を返されても我慢。キラには原因が分かったようだ。それが悔しかったりするのだがラクスの機嫌を取る方が先決。早く言えよって促せば、もう仕方無いなって意地の悪い顔をしてる。何か楽しんでないか?コイツ。

「あのね…君がカガリと楽しそうにしてるから怒ってるんだよ」


「……………………本気で?」
「本気で」
一度では飲み下せずに、言われたことを反芻する。

何だ、そうか。そうだったんだ。
ほっとすると同時に心が温かくなっていく。
ラクスも、ヤキモチ焼くんだ。可愛い。嬉しい。

「コラ喜ぶな」
知らぬ間に綻んでいた顔をキラに思い切りつねられた。
「痛っ痛いキラ!」
手を叩いて赤くなってるであろう頬をさする。涙目で睨んでもキラは呆れ顔のままだ。
「ちゃんとフォローしなきゃね?」
そうだ。こんなとこで喜んでる場合じゃなかった。

「サンキュ、キラ」

今すぐ貴女を抱きしめてキスして貴女が一番大切だと叫びたい。

いま、貴女の元へと向かいます。




可愛いあの子にくちづけを。