《胡蝶ノ夢》

31(sideA):守るべき約束は






「ママ〜!お腹空いた〜!あれ買ってよ〜!」
「申し訳ありません。3時にそちらにお伺いする件ですが…」
「この前彼氏がさ〜」

  オーブ連合首長国――この国に訪れるのは、今回で3度目だ。1度目は潜入、2度目は戦闘。よく考えると、真っ当な手段で真っ当な目的を持って入国したのは、今回が初めてかもしれない。周囲の平穏な喧騒に紛れるように、アスランは小さく苦笑を漏らした。
 空港についてすぐの入国検査も既に終え、さてこれからどうしようかと思案しながら建物の外に足を向ける。見上げれば青い空が広がり、暖かな陽気が降り注ぎ。その眩しさに、思わず目を細めてしまった。
 とりあえずは、荷物をホテルに預けに行くとして。
 この国に居るだろう数少ない友人達の居所はどこなのか、それを突き止める事から始めなければいけない。
 すぐ目の前にあったタクシー乗り場から手近なタクシーに乗り込むと、振り返った運転手に行き先を簡潔に伝える。目的地は市街地にあったしそこそこ名の知れた所であったから、ナビゲーションの必要はないだろう。シートに背を預けて流れる景色に目を向けると、バックミラー越しに運転手が声をかけてきた。

「お客さん、プラントから?」
「ああ、はい。分かります?」
「まぁ、まずその髪の色じゃナチュラルではありえませんしね。それに最近、多いんですよ、プラントからのお客さん。やっぱり、地球が物珍しいんでしょうかねぇ」
「そうですね、憧れるものは、あるんだと思いますよ」



 停戦協定が結ばれてから、およそ一年――世界は変わったようでいて、実は大して変わっていなかった。
 プラントと地球連合は相変わらず仲が良いとは言えなかったし、オーブも相変わらず中立の理念を掲げて閉鎖的だ。他の地域も似たようなものだろう。開戦前と終戦後で、地図上においての大きな変化はあまりない。
 だけども大半の人間にとって、そんな事は正直どうでもいい事であるに違いない。特にプラントは、コロニーという独立した環境にある。国境がどうの、勢力図がどうの、というのを気にかけるのは、ザフトに所属する人間と、地球にいる少数のコーディネーターくらいのものだろう。



 それに、確かに世界は変わっていないけれど、それでも何も残さなかった訳ではない。



 戦前はコーディネーター以外には鎖国状態であったプラントは、厳しい検査を設けてはいるものの、ナチュラルの入国を多少ではあるが受け入れるようになった。逆もまた然りだ。
 現にこの運転手がいうように、プラントでは今、地球へ旅行に行くのが流行しているらしい。さすがに大西洋連邦のような反コーディネーター思想の強い地域へは行けないものの、ジブラルタルやカーペンタリアのようなザフトの駐留基地がある場所や、オーブやスカンジナビア王国のような中立を掲げている比較的安全な国。母なる地球の自然を体感しよう、などと安っぽいコピーを掲げた旅行会社の広告を、プラントで目にした事も何度かあった。
 アスラン自身は気にも留めていなかったそれらを見て、行きたい、と食いついたのがラクスだった。その時になって初めて、そういえば彼女は地球に行った事がなかったのかと、ようやく思い出したものだ。



 そのラクスは今、歌手であった頃の活動の一切を休止して、政治の勉強に取り組んでいる。さすがに学校には通えないから、現議長であるギルバート・デュランダルや前議長であるアイリーン・カナーバに教鞭を取ってもらっているらしい。
 将来は外交官になりたいのだと、彼女は言っていたか。
 元々父親の影響を強く受けている彼女だ。同じような道を歩みたいとは思っていたのだろう。そのままアイドルに復帰したらさすがにアスランも苦言の一つも申しただろうが、彼女もそれぐらいは弁えているようだった。ディアッカなどは、勿体無いなと少々残念がっていたが。


 そのディアッカはといえば、今はアスランと同じ部隊に所属しており。

 互いに無事復隊する事が叶い、揃って降格処分を受けて赤の軍服が緑の軍服になり――幸か不幸か、揃ってイザークの下で働く羽目になり。
 これは上層部の好意なのだろうか、それとも嫌がらせなのだろうかと、配属当時は揃って本気で悩んだものだ。
 近付き難いオーラを纏う隊長と違って気前のいいディアッカと、隊長よりも成績の良い―と専ら噂されている―愛想は良くないが悪くもないアスラン。この2人がいて、一体どこの新人が直接隊長に話を持ちかけに行くだろう。悩み相談も進路相談も、果ては人生相談も、気が付けば隊長でなくその部下2人に頼られる始末。結果、イザークの怒りは当の2人に振りかかり、最初の内はああこれが中間管理職なのかと、アデス艦長やゼルマン艦長もこんな気分だったのかな、などと切なくなったりもしたものだが。

 今はもう、何だか慣れた。

 過去同じく隊長に苦労したのだろうダコスタを見かけると、あれよりはマシだな、と微妙な優越感さえ抱くようにさえなった程だ。
 その当のダコスタも他のエターナルの乗組員と同じくザフトに復隊したのだが、件の隊長は引退してしまったから、今はその呪縛からは解き放たれ、別の人間の下で働いているそうだ。心なし、以前よりも生き生きしている気がしたのだが、気のせいであって欲しい。ちなみに、その件の元隊長殿はザフトから除籍してプラントのどこかで珈琲専門店を開いているらしいが。



 人類の、世界の未来が――そう言っていた頃に比べたらやっている事はそれぞれ小さい事なのかもしれない。だけども今度こそ、この道で明日を切り開いていきたいと思う。
 守れないからと、手放した。帰りたいと、願った。贅沢にもそれを叶える事が出来たのだから、今度こそ。

 本来ならば、アスランを含むエターナルの者は皆、銃殺刑に処されてもおかしくない立場の者であったのだ 。
 それでも生きていられるのは、多くの人の支えと助けがあったから――デュランダルやカナーバを始めとする、穏健派の議員の口添えや、ラクスを支持する多くの国民――つまり、世間体というものおかげで。
 行動はどうあれ、プラントを核の脅威から守ったのはラクス達で、その結果は賞賛に値する。そんな風に言われながら、想像していたよりも軽い処分が下されたのは、比較的早い時期であった。むしろ最初からある程度は考えられていたのかもしれない。アスランはパイロットであった為にその場には居合わせる事は出来なかったのだが、カナーバからラクスに連絡が入ったのは、彼女が停戦の申し入れを全周波放送で発表した直後だったという。もしかしたら、その時には既に伝えられていた可能性もある。
 第一、よくよく考えれば、ラクスが自らの行動が故に脱走を余儀なくされたエターナルの乗組員達の安全を保障せずに、プラントに戻るという選択肢を与える筈がないのだ。もし死刑が確定していたのなら、彼女は有無を言わさずオーブなりに亡命していただろう。


 この件について、評議会でどういう議論が交わされたのかなど、そんな事は分からない。


 それでも今、その結果として、こうして普通の生活を送らせて貰っている。ならばそれでいいのだと思う。今更詮索する必要はないのだと思う。




 そうして過ぎ行く日々の中で。

 久々に、本当に久々に、休暇を取る事を許可された。
 その事実を言い渡されたアスランが、その貴重な休暇をどう過ごすべきなのかを決めるのに、時間はそうかからなかった。


 オーブに行こうと、そう思った。


 それでも最初は立場上、無理かもしれないとは思っていた。国外への旅行など、ましてや三隻同盟の一角を担ったオーブに行く事など、そう易々と許されないかもしれないと。
 けれどもアスランの懸念とは裏腹にあっさりと承諾の返事を貰い、気が付けば出立の前日にまで日は迫り。シャトルに乗っている時でさえ、どこか夢見心地だった。



 会いに行くと、約束したはいたけれど。


 自分の中では、まさかこんなに早くに実現するとは思いもしなかったのだ。




 空を見上げた。この空の下に、彼女は、彼女等はいるのだろうか――少しでも、こちらの事を思ってくれているのだろうか。


 アスランが一番最初に向かったのは、このオーブでの滞在先になるホテルだ。チェックインを済ませて部屋に向かい、そこで電話の受話器を手にとって。
 駄目もとでモルゲンレーテに電話をかけた。
 アスランは生憎と、オーブに居るだろう知人の居場所を一人として知らない。それは恐らく自分だけではなく、ラクスもディアッカも、それ以外の人も誰一人として知ってはいないだろう。教えて貰えるような立場ではなかったというのもあるし、そもそもプラントとオーブは離れすぎているのだから、当然の事ではある。開戦当初にアスランがキラの居場所を知らなかったのと同じだ。
 故にアスランはまず彼等の所在を掴む所から始めなければいけない。だが、本土に居るという事だけでも分かっているのだから、そういうのを不幸中の幸いとでも言えばいいのか。
 役所に問い合わせるという手も考えなくもなかったが、異邦人である自分に教えて貰えるとも限らない。何せプライバシーに関わる問題なのだ。だからそれはにっちもさっちもいかなくなった時の最終手段として、もっと気軽にかつ簡単に調べられそうな方法を――そう考えた時に、アスランの脳裏に真っ先に浮かんだのが、とある女性の顔だった。

 モルゲンレーテに勤めている、エリカ・シモンズ。

 彼女がもしまだそこに在籍しているならば、会社に問い合わせれば繋がる筈なのだ。いや、もし万が一退社していたとしても、手がかりは得られるかもしれない。
 そうして彼女を元に上手く辿ってく事が出来れば。
 一か八かの賭けではあるが、可能性がゼロではない限り、してみる価値はある。
 こういう時にだけ旧知の振りをするのだから自分でも都合が良すぎるとは思うが、他に良い方法が思いつかないのだから仕方がない。


 そうして――結果だけを言えば。


 エリカ・シモンズには無事繋がって、幸運な事にキラの連絡先を教えて貰える事が出来た。
 ありがとうございますとアスランが礼を口にすれば、どういたしまして、と柔らかい声で返ってくる。そうして、貴方がここに来ていると知ったらカガリ様が五月蝿いでしょうね、とクスクス笑うものだから、アスランもその様子を想像してしまって、電話越しにも関わらず思わず苦笑を返してしまった。

『貴方にも用事があるでしょうから無理にとは言わないけれど。出来れば、私にも一度会いに来てくれると嬉しいわ』

 貴方達の事を心配していたのは、私達だって同じなのだから。
 最後にそう言ってくれた言葉が嬉しくて。アスランは頷いた。必ず、とは言えずに善処します、と応えれば、貴方らしいわ、とエリカは笑った。
 彼女との会話はそこで終わった。
 エリカとの電話を切ると、次いで教えて貰ったキラの連絡先に電話をいれる。何を言われるだろうか、驚かれるだろうか。そして彼は今何をしているのだろう。久方ぶりの友人との電話は緊張するが、躊躇している暇はない。
 プルルルル、とおなじみの電子音が数コール鳴って、それから『はい』と懐かしい声が耳に届く。キラの声だ。アスランの顔に自然と笑みが浮かんだ。

「久しぶり、キラ」

 一言目は、自分で思っていたよりもすんなりと口にする事が出来て。

『…え?その声…アスラン!?何でオーブに!?っていうか何で僕の連絡先…!いや、そんな事より今まで何を……じゃなくて、えぇっと、兎に角元気そうで良かった…!』
「うん、とりあえず落ち着け。聞きたい事も色々あると思うけど…もしお前さえ良ければ、会えないか?」
『今から?…いいよ、分かった。アスラン今どこに居る?』

 色々聞きたい事もあるだろうに、何も言わずに承諾してくれるあたりはさすがキラだと言うべきか。待ち合わせの場所と時間を決め電話を切ると、アスランはちらりと時計を見遣った。
 幸いにしてキラも近くに居たらしく――というよりも、エリカから恐らく学校だろうと聞いていたから、そして、その学校の場所も聞いていたから、多分大丈夫だろうと予想はしていたのだが、違わずにいてくれた事にホッと胸を撫で下ろす。これでもし、移動に一日かかるような場所にいられたら、きっと会う事も叶わなかっただろう。
 会えるなら会っておきたいが、今回の旅行の目的は、彼に会う事ではない。
 そんなふうに色々考えていると、刻々と時計の針は進み、ああそろそろ行かなければ遅刻するな、とアスランはホテルを後にした。外に出た瞬間、ちかり、と太陽の眩しさにほんの僅かに目が眩む。プラントではまず味わえない感覚だろう。そんな些細な事にさえ、喜びを感じる。ああ、なんて平和なのだろう、と――。


 待ち合わせ場所にいくと、既に待っていたらしいキラが大きく手を振っていて、驚いた事に、その隣にはサイの姿まであった。どうやら同じ学校に通っているようで、キラが無理矢理引っ張ってきらたしい。キラが無理言って悪かったな、とアスランがサイに謝れば、

「いや、別に。俺もアスランとこうして会えて、嬉しいし」

 そう言ってくれるのだから、何だかくすぐったい。
 それにしても本当に急だったね、皆は何してるの、ちゃんと元気にしてるの。畳み掛けるようなキラの質問に一つ一つ答えながら、アスランもまたキラ達に問い返す。そういうお前達は何してるんだ、学校で何を勉強してるんだ。互いに知りたい事も教えたい事も沢山あって、本当は、こんな短い時間で語り尽くせるものではないのだけれど。

「ラクスもディアッカも元気だよ。今はまだ、あんまり自由な時間がとれないけど……ああそうだこれ、ラクスから預かってきた。もし会えたら渡して欲しいって言われてたから」
「ラクスから?」
「手紙だよ。俺も明後日まではこっちにいるから、返事を書くなら渡しておくし」
「わ、分かった!書くよ!絶対書く!」
「良かったよ、無事に渡せて。連絡先知らなかったから、渡せなかったらどうしようかと」
「ああ、そういえばよく調べたね、電話番号。ハッキングでもしたの?」
「馬鹿、お前じゃあるまいし。エリカ・シモンズ女史に聞いたんだよ。モルゲンレーテに直接電話かけて繋げてもらって…」
「…わお、アスランってば、チャレンジャーだね…よくそんな所に電話をかけたよ…」
「俺もそう思う。だけどそれが一番手っ取り早いと思ったから」

 キラもサイも元気そうで、安心した。アスランがこっそり安堵の息を吐いていると、

「…じゃあ、僕達からはこれね」
「は?」

 キラの手によってサッと目の前に差し出された小さなメモ用紙に、何だこれ、とアスランは首を傾げた。

「ミリアリアの連絡先…と、こっちが大学の住所と地図。今の時間だったら、多分まだ学校だと思うけど…」
「何ならこっちに呼び出してもいいけど、俺達、お邪魔虫になりそうだしな」
「そうそう。直接会いに行って驚かせてみたらどう?こっから結構近いし、歩いて行けるよ」

 言いながらクスクスと笑みを漏らす二人の姿を、アスランはしばしの間ぽかんと見つめて。
 だってまだ何も言っていないのに。彼女の連絡先を教えて欲しいなんて、一言も――いや、確かに彼に連絡をとったのは、それが目的でもあるのだけれど。
 なかなか受け取ろうとしないアスランに焦れたキラが、その手にぐいとメモを押し付けてくる。その時になってようやくメモに視線を落としたアスランは、ああ確かにここから近いな、とどうでも良い事を考えた。

「ほら、さっさと行ってきなよ!ミリアリア帰っちゃうよ!?」
「俺達の事は気にしないでさ。というより、この後どうせゼミがあるから、実はそろそろ戻らないといけなかったりするんだ」
「嘘じゃないよ、本当だからね。…あ、ちなみに学校の近くに花屋もあるから、プレゼントするななら何か買って行ったら?赤いバラとかさぁ」
「ばっ…そんな物買う訳ないだろ!何だよ赤いバラって!」
「え、何って…プロポーズ?」
「するか!」

 茶化されながらも二人に背を押され、アスランは席を立った。頑張ってね、と言われるのはこの場合違うような気もするのだが、敢えて素直に頷いておく。
 明日会えたら会おう、と簡単な約束を交わして、見送られながら地図に示された場所に向かう。道中には教えて貰った通り花屋があったが、本当に買うつもりはなかったから、店先に並んだ色とりどりの花を横面に眺めるだけで通り過ぎた。
 学校に着いたら、まずは適当に校内を見て回ろうか。普通の学校というものをあまりよく知らないからどんなものなのか興味はあったし、せっかくの機会だ。その後に、事務なり何なりに申し出て彼女を呼び出して貰えば良い。
 自分でも呆れる程の計画性のなさだったが、今はそれが心地よくて楽しかった。普段ならば絶対にこんな事はしないけれど、偶には悪くないと思う。
 行き違う学生達は、皆笑顔で楽しそうで。戦時中ならば「何を呑気な」と忌々しく思ったそれらも、今ならば微笑ましい気持ちで見送る事が出来る。


 そしてふと、校内にあるカフェテラスに、何気なく視線を向けた時に。


 彼女が――ミリアリアが、いた。
 もちろん、彼女が通っている学校なのだから、彼女がいても不思議はないのだけれど。
 だけどもこんなにすぐに見つかるとは思っていなかったから、アスランは驚きにピタリと歩みを止めた。


 彼女が何気なくこちらに視線を向ける。驚いたように見開かれる目、何事かを呟く口。その心情が分かるから、そして、何となく名前を呼ばれたような気がしたから、アスランは応えるように苦笑を浮かべた。

「っ!アスラン!」

 名前を呼んで駆け寄ってきた彼女は、動揺を露に、畳み掛けるように問いを投げかけてくる。
 その胸元にはいつか預けたままのドッグタグが。
 それが嬉しくて、ちゃんと持っててくれたんだな、とミリアリアの言葉を遮って指摘すれば、だって約束したじゃない、当たり前のようにそう返される言葉。
 会いに行くからその時に返して――だから自分は、こうして彼女に会いに来た。


 約束を果たすために。それから。


 だがしかし、友人達と一緒だったのならば、些かタイミングが悪かっただろうか。もしかすると出直した方が良いかもしれない。アスランがその旨を口にすれば、ミリアリアはハッとしたように後ろを振り返ると、

「ちょ、ちょっと待って!すぐ戻ってくるから!ここで待ってて!」

 そう言って、身を翻した。
 何やら友人達と言葉を交わしている様子を見ると、もしかして暇を告げているのだろうか。だとしたら気を遣わせてしまっただろうかと申し訳なくも思ったが、彼女が自分を優先してくれたのは嬉しかった。

「お、お待たせ!ホント、いきなりだったから吃驚して…!前もって言ってくれればちゃんと予定もあけておいたのに!」
「その事についてはごめん、謝るよ。それより、どこかゆっくり話が出来る場所に移動しないか?聞きたい事とか沢山あると思うし」

 戻ってきたミリアリアに、そう言いながら片手を差し出す。彼女は最初きょとんとしてアスランの顔とその手を見比べていたけれど、意味を理解したのか頬を微かに朱に染めながら、そっと手を重ねてくれた。
 その手を、ギュッと握り締めて。




「君に伝えたい事が、あるんだ」













ここでは敢えて何も書かないでおきます。


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